2023.06.17

経営

No7. 損益計算書の本当の使い方

皆様、こんにちは。財務と経営のコンサルタント梅澤太陽です。
今回は、損益計算書(PL)について書きます。

損益計算書を見るときに、売上高、税引前利益、法人税等しか見ていない方には、特に読んで頂きたい内容です。





損益計算書は、ビジネスモデルや事業構造のチェックができる損益計算書は、名前のとおり利益を計算する書類ですが、損益計算書には5つの利益があります。

損益計算書の概略図

  売上高 257,402
  売上原価 76,167 30%
①売上総利益(粗利) 181,235 70%
  販売費及び一般管理費 191,297
②営業利益 -10,062 -4%
  営業外収益 20
  営業外費用 3,600
③経常利益 -13,642 -5%
  特別利益 20,000
  特別損失 0
④税引前当期純利益 6,358
  法人税等 1,907
⑤税引後当期純利益 4,451



それぞれの利益の意味を見ていきましょう。


① 売上総利益(粗利)
売上総利益(以下、「粗利」という)は、売上高から売上原価を控除した金額です。粗利は、損益計算書の概略図のとおり、他の4つの利益のオオモトになり、非常に重要な利益です。粗利については、毎期、売上に対する比率(粗利率)を比較して確認することが有益です。例えば、概略図の例の場合は、70%となっています。この70%が良いかどうかは下記の2つで検証します。
A) 業種平均との比較(他社比較)
B) 過年度の自社実績との比較(自社比較)

他社比較で低い場合や、自社比較で前期の粗利率が75%だった場合は、粗利率が低くなっている原因を特定し対策を考える必要があります。例えば、商品、製品ごとに、粗利率を分析し、次のことを検証してみましょう。
 売上額の最大化を意識しすぎて値引きが適正値を超えてしまっていないか。
 営業マンへの評価基準が、売上高だけになっていないか。
 仕入原価、製造コストの値上がり分を、自社の売値に転嫁できているか。

粗利率が低下しているが、売り単価の値上げができない場合、前期と同じ売上高でも粗利益の額は減少してしまいます。販売数量を増やして、前期と同じ粗利額を得るという方法もありますが、まずは、売り単価のアップができないかを検討すべきです。
☆ 粗利率を継続して観察し、下がった場合、直ぐに原因究明と対応を考え実行する。


② 営業利益
営業利益は、粗利から販売費及び一般管理費(固定費)を控除した金額です。販売費・一般管理費は、大まかに言うと、人件費や家賃など、売上原価や支払利息以外の経費です。
売上総利益(粗利)が多額に出ている会社で、同業他社と比較して営業利益が少ない会社は、固定費が多すぎる可能性があります。概略図の会社は、粗利率は70%と高く、約1.8億円の粗利益額を出していますが、販売費及び一般管理費が1.9億円であるため、営業利益はマイナスとなっています。この様な場合は、販売費及び一般管理費の中に無駄な経費が無いか、人件費に対する生産性が低下していないかを確認する必要があります。確認した結果、無駄な経費が全くなく、粗利率もこれ以上アップできない、そして売上高もこれ以上上げられないという結論になった場合は、そのビジネスモデルでは、利益を出すことは不可能ということになります。ビジネスモデル自体を見直す必要があります。
また、営業利益率が低い会社は、外的要因による売上の減少に弱いことが多いです。例えば、急激な円安による仕入コストの上昇や、主要取引先からの値下げ要請などにより粗利率の低下が起こった場合、営業利益率が低いと下がった分を吸収する余裕が少なく、固定費は直ぐに削減できないものが多いため、粗利の減少に対応できず赤字に転落してしまいます。逆に営業利益率が高ければ、それだけ粗利の減少に対して余力があり、売上高の減少に対する耐性は強くなります。普段から固定費が膨張しないように気をつけて、営業利益率を高くしておきましょう。固定費が直ぐに下げられないのは、人件費や家賃を想像してもらうと解りやすいと思います。人を解雇したり、事務所を引っ越したりすることは、直ぐに行うことが難しい場合が多いと思います。
☆固定費を粗利の80%から90%以内に普段から抑えておくことが肝要です。


③ 経常利益
経常利益は、営業利益に受取利息、配当金等を足して、支払利息等を控除した金額です。中小零細企業は、借入をしているケースが多いため、受取利息より支払利息が多くなるケースが多いと思います。支払利息を減らすには、利益を出し続けて自己資本額を増やし、借入金を減少させていくことが必要です。そして次のステップとして、潤沢な自己資金をもった場合は、一定の資金を投資に回すことにより、受取利息や受取配当が増加します。
会社の財務状態が良ければ、営業外費用を減らして、営業外収益を増やすことができます。


④ 税引前利益
経常利益から特別な損益(役員退職金の支払い、固定資産の売却損益等)を足し引きした利益です。本業が赤字の場合に、保有する含み益がある資産を売却して最終的に利益をだして決算をする場合もあります。例えば、なんらかの外的要因で多額の赤字を本業に生じさせてしまい、債務超過になってしまうことが見込まれる場合、含み益がある本社ビルを売却して、最終的に税引前利益を黒字にするという様なことです。債務超過の場合は、融資を受けにくくなり事業継続が難しくなるケースもあるため、この様なことが行われることがあります。


⑤ 税引後利益
税引前利益から法人税等を控除した最終的な利益です。税引後利益は、貸借対照表の自己資本となる大切な利益です。税引後利益の上に記載されている、法人税等の金額を見ると、税金を少しでも減らしたいという思いが頭をよぎり、つい過度な節税を行ってしまっているケースをよく目にします。過度な節税をすると、当然、利益が減ります。毎年、過度な節税を続けた場合は、自己資本比率がいつまでも低い状態のままとなり、会社の安全性は上がらず、借入金も減らなせないため、長期に渡り、借入利息を支払うことになります。借入条件も良くならない事が多いと思います。


会社の本来の目的である、①利益を出す、②会社を継続する、という視点から見て、本当に必要な節税だけを行ってください。所得拡大促進税制の様な制度は、積極的に利用して、税コストを下げましょう。

損益計算書は、自社の収益構造の確認や、生産性、経費に無駄が無いか、収益性に変化は無いか等、様々な経営に必要な情報を得られます。損益計算書を活用して、動きが速い経営環境にすばやく対応し、継続的に利益を出し続けて会社を守っていきましょう!

財務経営にご興味がある方は、ホームページのお問い合わせ(CONTACT)ページからお気軽にお問い合わせください。

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梅澤太陽税理士事務所
梅澤 太陽

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